近年企業は利益を追求するものだけではなく、社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)が求められるようになってきてきます。
CSRは法令遵守(コンプライアンス)、労働者の人権への配慮、環境配慮、社会的貢献といった広い分野にわたり、顧客、クライアント、株主に対してだけではなく、その企業で働く労働者や地域社会に対しても果たすべき責任として求められています。
実際のところは、近年企業の不祥事により社会的信頼を失墜して経営に大きなダメージをもたらすことになった企業が多く出たため、顧客、クライアント、株主等社外のものに対するCSRやコンプライアンスが優先されています。
また、使用者と労働者の関係では労働者が弱い立場になりがちですが、もはやそのような体制は見直していく必要があります。労働者はいわば「人財」であり、労働者の働き方や会社での在り方に十分な配慮を行い、かけがえのないものとして対応していくことが企業にとっても大きな責務となります。
労働基準法は労働者の人権を尊重するための「最低」の労働基準を定めたものですが、あくまでも「最低」であるのでそれを守ればいいという話ではなく、労働者の職場環境を良くするよう企業は努力しなければなりません。
企業が経済活動を行う上で、労働災害をおこさないような姿勢を取るのは当然ですが不幸にして、労働災害が起こり、労働者が負傷、疾病にかかり、あるいは死亡や障害が残ることもあります。
基本的に企業は、労働基準法に基づく災害補償を行う義務があります。
労働基準法では第8章で療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料等について定められています。
しかしながら、実際には労働者を使用する事業場であれば「労働者災害補償保険」(以下、「労災保険」という)に加入する必要があり、使用者はこの保険を使用して災害補償をしていくことになります。
<労働基準法第84条>
この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
2 使用者は、この法律による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。
労災保険法によって補償される場合には、労働基準法上の使用者の災害補償責任を免除することとしたものです。
また、本法により補償を行った場合には、その価額の限度において同一の事由について民法上の損害賠償の責任を免れます。
ただし、労働災害が起こった場合には、企業は上記の災害補償以外にも様々な責任を負っています。
労災保険の給付がされても、それで十分ではないとして、被災労働者や遺族に民事損害賠償を請求されるケースもあり、金額も1億を超えるものも出ており高額化しています。
民法では次のような規定があります。
<民法第415条>
債務者が、その債務の本旨に従った履行をしないときは、債務者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする
<民法第709条>
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
民法第415条の「債務不履行責任=安全配慮義務違反」及び、民法第709条「不法行為責任」が問われることがあります。
また、死亡や傷病等の原因となったとされる労働災害が起こった場合、法令違反や過失があったとされた場合には刑事的責任を負うことがあります。

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